2020年12月31日木曜日

第51回「インターンを受け入れる側のドキドキ感について」 茨城県流域下水道事務所 石渡恭之

職場の写真データを整理していたら,うちの職場(茨城県流域下水道事務所 水質管理課)でインターンシップを受け入れた時の写真がでてきました。懐かしい。このリレーエッセイを学生さんがみることもあるだろうと期待しながら,このインターンシップの時のことを題材にさせてもらい,ぜひとも「受け入れる側もドキドキしているのですよ」ということを紹介したいと思います。

インターン受け入れ,ワクワク・ソワソワします
 学生さんの中には企業などでインターンシップを行なう方も多いと思いますが,茨城県庁でもインターンシップを受け入れています。部署により毎年のように学生の応募があるのか,またはあまり来ないのかはまちまちです。ちなみに,私の今いる下水道の水質管理のセクションには,実はあまり来ません。そんな中,珍しく学生の受け入れがありました。
 茨城県の場合ですが,インターンシップの学生がくるということは数週間前から情報がくるのですが,どんな学生なのかなどの詳細は担当は直前までわかりません。「学生,どんな子だろう」という話題が頻発するようになり,「留学生らしい」とか「男の子らしい」とか,情報が一つずつじわじわと伝わってきて,「日本語話せるんだよね」とか,不安を抱きつつ,ワクワクしつつで心の準備をしていきます。

研修計画は日常業務との兼ね合いで
 今回は受け入れの2週間くらい前に,上司より私(入庁10年目)と若手のKさん(入庁3年目)で対応するように指示をうけました。年齢の近い方が学生さんも話しやすいし,学生さんの不安などもわかってあげられるだろうということで,直接の担当はKさんに頼みました。それから課の皆のスケジュールとにらめっこしながら研修計画を立てます。学生さんには申し訳ないのですが,日常業務を滞りなくこなすことがまず求められます。日常業務の実際を見てもらいつつ,でも最大限いろいろな体験をしてもらうにはどうしたらいいだろうかと熟考しました。ここまでくると,まだ見ぬ学生さんに愛情が芽生えてきます。

でも,その計画,見落としはあった
 今回はインターンシップ日程の1日目は県庁下水道課での研修だったのですが,うちの事務所で行う委員会を見学する内容でしたので,そこで本人に会えました。挨拶のできるさわやかな子だ,よかった,ひと安心したのを覚えています。しかし,ここでドキッとしたのは「水質分析をやりたいです」という希望があったこと。うん,そうだ,こちらの都合ばかりで,学生の希望をあまり考えていなかったと反省し,スケジュールを再調整しました。

県職員の仕事を見て欲しい,現場の課題に触れて欲しい
 民間企業とかだと,インターンシップで学生さんの人柄をよく見て,採用のための参考にすることもあるとかないとか聞きますが,うちは役所なので,そのようなことはありません。我々の思いとしては,就職先の候補として県職員を考えている学生さんには,インターンシップで県職員の仕事の実際を見てもらい,志と実際のマッチングを確認してもらいたい。そのうえで,やる気を持って志望してもらえれば,と考えています。また,たとえ県職員にならないとしても,現場の課題を知ってもらえればという思いもあります。例えばうちの事務所であれば,下水道行政の現場で直面している課題などを知ってもらい,その後,もし下水道業界に就職したならば,その課題の解決などを心にかけてもらえれば,とても助かります。
 今回の学生さんは留学生なので(茨城県職員にはなれないので)後者の思いを持ちながらの研修でした。まずは,大学の実験室のリアクターとは異なる,「実プラント規模」というものをよく見てもらい,水処理だけでなく,汚泥の処理などの一連の流れが大切であることを知ってもらおう,また,現在の課題の一つである下水管路の硫化水素対策について,その調査に同行してもらおうなどの思いを巡らせながらプランを立てました。

広く浅くになりましたが,様々なことを見てもらいました,,,我々も勉強になる
 研修内容としては,例えば
・処理能力7,480~200,000m3/日まで,大小規模の下水処理場がある。その違いを肌で感じてもらう。
・硫化水素対策の調査に同行,手伝いをしてもらう。
・水質管理のために水処理工程のどこからどのようにサンプリングを行うのか知ってもらう。
・水質管理のための分析を手伝ってもらう(主に見学だが)。
・化学分析につきものの容器・器具洗浄の大変さを知ってもらう。
(検査のルーチン分析の現場では洗い物が大量に発生する。)
・活性汚泥の中の微生物を顕微鏡観察する。
などを行ないました。
 僕とKさん以外にも,課の職員たち皆で対応させてもらったのですが,職員同士や維持管理業者の方とやり取りするのとは異なり,説明はどこまで噛み砕けばよいのかを考えたり,そのためにあやふやなところを復習したりする良い機会になりました。また,例えば顕微鏡観察など,いつもはあまりやらない(いつもは維持管理業者の方が主に行っている)プラスアルファの技術に挑戦する機会にもなり,我々にとってもスキルアップになりました。

ぜひインターンシップにきてください
 県庁でのインターンシップ,部署によってはどのような内容になるか,またそのストイックさ加減は異なってくると思います。ただし,受け入れに際して,これから社会に出る学生さん達にぜひ伝えたい思いを抱いていること,そして若い活気にワクワクしていることは,きっとどこ部署のどの職員も同じ。学生の皆さんも,気張らずに,その思いにふれてやろうという位の気持ちで,どんどんインターンシップに挑戦してきてほしいと思います。ちなみに,本記事の学生さんは下水道の仕事に興味を持ってくれ,日本の下水道の業界で就職が決定しました。下水道の発展を牽引してくれることを期待しています。

















写真:顕微鏡で見た微生物のポーズで記念撮影筆者(左)と学生(右)
元気をもらってはしゃぎすぎた。

0 件のコメント:

コメントを投稿

2024年度 日本水環境学会関東支部イベント開催のご案内 水環境分野で活躍する仲間たちの仕事や働きぶり紹介 -Web開催-

  水環境分野には様々な仕事があり、男女共に活躍している職場があります。本イベントでは、例年関東の水関連企業等を順に紹介しています。今年度は水関連分野の各業種(研究機関、国際協力、水インフラシステム、水コンサル、県行政、ウォーターエバンジェリスト)で働いている方々に、仕事内容や仕...