2020年12月31日木曜日

第48回 「レンズの向こうの小宇宙」 千葉県環境研究センター 飯村 晃

 今月(2017年7月)は私にとっては例年にも増して「赤潮」のひと月だった。前月半ばから断続的に青潮が出ていたと思ったら、いきなり東京湾が真っ赤に染まったのだ。

思えば、前任者の突然の異動で東京湾のプランクトンを顕微鏡で観なければならなくなったのは10数年前。生物は全くの素人だから、もう目の前は真っ暗だった。頼りは研究室の大先輩が残していってくれた「写真集」のみ。顕微鏡下に見えたプランクトンの姿と写真集の写真を見較べて「似ている」、「似ていない」、「似てるけど違う?」の繰り返しだった。でもそのうち、「あの辺にあったのでは?」と写真集のページが思い浮かぶようになってきたのには驚いた。ページを繰っているうちに関係ないプランクトン種の姿まで憶えていたらしい。

東京湾には、おおよそ月2回のペースで出ているが、そのたびいろいろなプランクトンに出会える。どうやって進んでいるのかわからないが、優雅に泳ぐ珪藻。宇宙船のような渦鞭毛藻。瞬間移動するのは動物プランクトンのメソディニウムか。単細胞生物ってスゴイ。レンズの向こうの小宇宙に見とれて時の経つのを忘れてしまう。

冒頭の赤潮はプロロケントルム・ミカンス。東京湾の水からはしょっちゅう見つかる種だが、こんなに高密度なのは見たことがない。ここまでくると厄介者以外の何者でもないが、本来植物プランクトンというのは「基礎生産者」として海の生態系を支え、二酸化炭素を固定して深海へ運ぶ者として地球環境を支えている存在だ。これからも地球を支えつつ、私たちに少しだけ「宇宙」を見せてくれる存在でいてほしいものだ。


 昨年度より幹事になりました千葉県の飯村です。リレーエッセイは初めてで、場違いなことを書いてしまったかもしれませんがお許しください。今後ともよろしくお願いします。

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