2020年12月31日木曜日

第43回 「ミラノ万博と日本酒」 東京都健康安全研究センター 猪又明子

 今年の夏休みに、大学生の息子と二人でミラノに一週間旅行した。「なぜミラノにそんなに長く?」と思われるだろうが、2年前のイタリア旅行の際、行きの飛行機が1日遅れ、ミラノに夜中着、翌日早朝の列車で移動したため、何も見られなかったという、いわばそのリベンジである。

ミラノにはACミランとインテルの2チームが拠点を置くサンシーロスタジアム(正式にはスタジオ・ジュゼッペ・メアッツァ)があり、サッカーファンの息子と私にとって、ぜひとも訪れたい場所であった。また、旅行の時期にミラノ万博が開催されていたので、今まで一度も万博に行ったことのない私達親子は、「せっかくだから行ってみよう。」ということになった。

日本ではあまり知られていないミラノ万博であるが、そのテーマは「Feeding the Planet, Energy for Life」(地球に食料を、生命にエネルギーを)であり、食と農業がメインである。我が日本館は、参加148団体中最も人気のあるパビリオンの一つと聞いていた通り、私達が行ったときは、夕方の人が帰り始める時間帯だったにもかかわらず長蛇の列で、2時間待ちの最終組であった。

日本館のテーマは「Harmonious Diversity-共存する多様性‐」で、日本食や日本食文化の多様性が、食糧問題などの地球規模の課題解決に貢献できるというメッセージを発信していた。地球規模の課題には、もちろん水不足問題が入っており、新しい食材候補としてユーグレナが挙げられているなど、私のような水関係者にとっても興味深い内容であった。

日本館のパビリオン外壁は木組みになっており、非常に目を惹く造りである。その入口には、日本酒の樽でできたオブジェ(?)があり、夜にはライトアップされて美しかった。この前で記念写真を撮る人がとても多く、私も撮ったが、果たしてこれが日本酒の樽だとわかる人は、どれだけいるだろうか?近くに説明等は見当たらなかった。ちなみに、この樽には都道府県の花(写真は神奈川県のヤマユリ)が、都道府県名と共に描かれていた。

日本酒好きの私にとって、日本館の入口に酒樽が堂々と並べられているのは、非常に嬉しかった。和食がユネスコ無形文化遺産に登録された影響なのか、2年前のローマやフィレンツェでは全く見なかった日本料理店が、今回のミラノではよく見かけた。日本館のイベントで、日本酒をふるまう様子をテレビで観たが、かなり好評のようであった。

和食に合う酒は、何といっても日本酒である。和食ブームに引き続き、日本酒ブームも来るのではないかと思う。特に、吟醸や大吟醸といった香りが華やかでフルーティな日本酒は、海外でも受け入れられるだろう。日本でも、最近は若い人たちが日本酒のおいしさに気付き始めたようである。

先日、地元の酒屋さんが主催する日本酒試飲会に初めて参加した。全国から20蔵が集まり、各蔵から5,6銘柄の日本酒が提供された。3時間で全ては試飲できなかったが、半分程度は味わえたと思う。そこで驚いたのは、参加者の多くが意外にも若者(20~30代)で、女性も少なからず(2~3割)いたことである。20数年前に連れられて行った日本酒品評会には年配の男性しかいなかったので、今回もそうだろうと思っていたのだが、予想とは全く違っていた。最近は若者や女性にも日本酒愛好者が増えてきたようで、とても嬉しい。

ご存知のように、日本酒造りには水が重要である。良い酒蔵には、良い水が湧いている。酒造米の生育にも水は欠かせない。美味しい日本酒を造るには、水源の保全が必要であり、既に大手飲料メーカー等では水源保全に取り組んでいる。国内はもとより、海外でも日本酒が飲まれるようになれば、酒造りのための地下水保全や水田耕作が進むのではないだろうか。「日本酒造りは多様で持続可能な未来を切り開く。」なんて、日本館のメッセージに入れたらいいのになあ。

























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